2011年02月11日

断熱と気密、換気のその先にある住宅の常識

「外張断熱」での高断熱住宅を何棟か設計しました。

それにはアキレスが販売しているオープンな外断熱工法を採用したこともありました。

これは、ウレタンボードで建物全体をくるむものです。・・・セーターを着せてやるようなものです。

湿気のある部屋の空気が温度変化のある断熱層に浸入すると、結露がおきます。

木造軸組工法では柱と柱のに断熱材を挿入する「軸間断熱」の場合、柱や梁が断熱層内に存在することになります。
それに対して「外張断熱」は、断熱層を柱の並ぶ外側に出すことにより、骨組みを構成する躯体内の結露は起きにくい構造となるのです。

また、「軸間断熱」では断熱層の外側になってしまう屋根裏や床下が、「外張断熱」では断熱層の内側つまり部屋側になるので、夏の屋根裏の暑さ、冬の床下の寒さが部屋内部に影響は少なくなります。

逆に、床下の水の浸入がないよう対策を講じておかないと床下はプール状態になります。

家の中で外部の暑さ寒さを、冷暖房の機械装置を使ってしのごうとすれば、外界からの熱の影響を少なくしなければなりません。

魔法瓶なら最初の温度が長く保たれるのに対し、断熱層のないポットであればずっと通電しなければないのと同様です。

そのほかにも、熱を跳ね返す「遮熱」塗料の技術や熱のエネルギーを分子の運動エネルギーに変換する塗料技術も最近では登場してきました。

すべてこういった技術は省エネルギーと快適性を目指しては生まれてきました。

強調したい点は、すべてを科学技術に頼ることでは解決しないこともあるということ、しかしこれらの技術に関して常にアンテナを向けずには住宅や建築を作ってはいけないということです。

私はそんな方向性の中、以下のような考え方を設計に取り入れています。

自然の通風とセットで室内の快適性を得ることは日本では古くから定説となっていますが、そのために重要なのは高気密性(密閉度)を高めることです。

高断熱は高気密とセットになり効果のあるものになりますが、換気を忘れ無いことです。

温帯の高気密高断熱住宅には、「閉じるための技術」と「開くための設計」がセットで必要です。

気候の厳しい真冬と真夏は閉じて、最小限の換気装置で補い、それ以外の季節はなるべく開くのです。

具体的には通風のための風の道、窓の種類、日射を調整するため窓の位置、庇の大きさ、ブラインドや時には落葉樹の利用などなど、基本的な「家の設計」そのものが非常に大切になります。

うまく設計すれば、例えば夏でも夜は窓を開けて涼しい外気を取り込み、朝に閉めれば午前中くらいはクーラーがいらない・・・といった使い方も可能です。

高価な材料や技術ではなく、難なく工夫できる従来からあることを設計で実行するということです。

posted by まちかどけんちくか at 18:27| Comment(0) | TrackBack(0) | すぎはら設計の住まい

木造は日本人のDNAに刻みこまれている

「木造の軸組工法」という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、線材といって、直線で表現できる柱(タテに立つ材料)や梁(ヨコ方向に柱を連結している材料)、床組(床をささえる材料)、屋根、などで主に構成されている骨組みです。
自然の力で成長した素材、植物で人間の生活環境の部分を構成することは、言うまでも無く人間の生活にやすらぎを与えてくれます。

日本人の祖先が樹木を乾燥させて建物を作るようになって、何千年という歴史を積み重ねており、生活の中に滲みこんでいるせいでしょうか、鉄骨造や鉄筋コンクリートが伝わってきて、これだけ普及した現代においても、尚国土交通省のアンケート調査では、日本国民の8割以上が木造の戸建住宅に住みたいという願望をもっている、という結果が物語っています。

そしてそれを支えているのは、決して大手住宅メーカーではなく、全国に広く分布し、地味な活動を続ける身近な中小地元工務店がその8割をしめています。

大きな会社の組織力は、その工事量や売り上げを確保するためには有力かもしれませんが、良い住宅をひとりの施主さんのために、たった1軒作るのには重要な要素ではないことを裏付けているように思えてならないのは私だけでしょうか。

また、一時期、日本の商社が南洋の森林を伐採しつくしたことが地球温暖化の一因であるという報道を聞いたことがありませんか。

あの行為のおかげで樹木を伐採すること自体までもが「悪」のレッテルを貼られてしまいました。
しかし、環境保護の点からは、計画的に伐採して、木造住宅に使用することは、鉄骨造やコンクリート造に比べて、その生産に消費するエネルギー量がはるかに少なく、したがって二酸化炭素の発生量を抑えることができるのをご存知でしたでしょうか。

木材は、住宅にその形を変えたとしても、その解体の時期を迎えたときにも、やはり有機物質としての再利用により第2の価値を生み出すことができ、またそれに必要とする消費エネルギーやコストも、やはり金属やコンクリートなどより格段に少なくてすむのです。

研究者の中には、木造の住まいをたくさん造ることは、環境保護の面で、街に森をつくるに等しいと言った方がみえます。

樹木の成長に100年掛かるとすれば、100年間寿命のある住宅をつくれば、環境に負荷を与えない完全なサイクルが成り立つとする理論も存在しています。
(参考文献:「木材の住科学 木造建築を考える」東京大学教授 有馬孝禮著 東京大学出版会)

木造の住宅を作るのは時間が掛かります。
なぜかといえば、生き物を人間の生活容器とするからです。
何十年、何百年と地面から養分を吸い続けて成長した樹木を伐採すれば、その水分を抜いてやらなければなりません。
そして木材は、乾燥することにより強度を持つ性質をもち、乾燥時間が非常に大切で、建物にその命の形を変えてから何年生きてゆけるかが決められる作業といえます。
このことを、大工さんはよくご存知です。

私は、その乾燥に必要な時間は神様が樹木と人に与えた「運命」ではないかと解釈しています。
まさに、住まい、特に木造軸組工法の家は、じっくりと建築主さんと話し合う必要があり、数年という月日はあっというまに流れてしまいます。

人は、四季の移ろいを感じつつ、数年の周期で我が家の完成の感激を味わい、木材はその時間の経過のなかで、乾燥を終えその家の一員として落ち着き、強度を発揮する。
その現場を通じて知り合ったメンバーは、私を含めて仲良しとなり、竣工後のメンテナンスも、知り合い、あるいは友人のひとりとして、また訪れることができるようになっている。

ロマンチストを気取っているのではなく、これが本来あるべき住まい創りであり、現実も経験しつつあります。

ファーストフードに対する「スローフード」という言葉があるように、住まいの創り方もスローであるべきで、これには、木造がピッタンコなのです。
私はこんな考え方、生き方がこの上なく好きです。

posted by まちかどけんちくか at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | すぎはら設計の住まい

冷蔵庫を買い換えよう・その3

今回は最後の駄目押しです。

「冷蔵庫を買い換えよう・その2」では、1994年以前の冷蔵庫を買い換えると600kw時の節約になり、月に6000円電気代が下がったご家庭が実在したこと、さらに最近の製品ならば一年に6000円の電気代で動いてしまっているということなどを書いてみました。

今回は、高効率の家電を導入することにより現状より約40パーセントの家電エネルギー削減率を実現する具体的内容を建築省エネルギー機構が提案しています、それをご紹介しておきます。

現状:2000年製冷蔵庫(400リットル)、ブラウン管テレビ、通常の電気ポット、通常の洗濯機、だとすると、40パーセント消費電力削減の組合せは2003年製冷蔵庫(400リットル)、液晶テレビ、瞬間湯沸かし時間制御付き温水暖房便座、魔法瓶タイプの電気ポット、低待機電力タイプの製品、となります。

もし、これをお読みになった方で「これはうちのパターンだ」と気が付かれたら、是非実行してみてください。
posted by まちかどけんちくか at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) | Useful_Information お役立ち情報