2011年02月11日

木造は日本人のDNAに刻みこまれている

「木造の軸組工法」という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、線材といって、直線で表現できる柱(タテに立つ材料)や梁(ヨコ方向に柱を連結している材料)、床組(床をささえる材料)、屋根、などで主に構成されている骨組みです。
自然の力で成長した素材、植物で人間の生活環境の部分を構成することは、言うまでも無く人間の生活にやすらぎを与えてくれます。

日本人の祖先が樹木を乾燥させて建物を作るようになって、何千年という歴史を積み重ねており、生活の中に滲みこんでいるせいでしょうか、鉄骨造や鉄筋コンクリートが伝わってきて、これだけ普及した現代においても、尚国土交通省のアンケート調査では、日本国民の8割以上が木造の戸建住宅に住みたいという願望をもっている、という結果が物語っています。

そしてそれを支えているのは、決して大手住宅メーカーではなく、全国に広く分布し、地味な活動を続ける身近な中小地元工務店がその8割をしめています。

大きな会社の組織力は、その工事量や売り上げを確保するためには有力かもしれませんが、良い住宅をひとりの施主さんのために、たった1軒作るのには重要な要素ではないことを裏付けているように思えてならないのは私だけでしょうか。

また、一時期、日本の商社が南洋の森林を伐採しつくしたことが地球温暖化の一因であるという報道を聞いたことがありませんか。

あの行為のおかげで樹木を伐採すること自体までもが「悪」のレッテルを貼られてしまいました。
しかし、環境保護の点からは、計画的に伐採して、木造住宅に使用することは、鉄骨造やコンクリート造に比べて、その生産に消費するエネルギー量がはるかに少なく、したがって二酸化炭素の発生量を抑えることができるのをご存知でしたでしょうか。

木材は、住宅にその形を変えたとしても、その解体の時期を迎えたときにも、やはり有機物質としての再利用により第2の価値を生み出すことができ、またそれに必要とする消費エネルギーやコストも、やはり金属やコンクリートなどより格段に少なくてすむのです。

研究者の中には、木造の住まいをたくさん造ることは、環境保護の面で、街に森をつくるに等しいと言った方がみえます。

樹木の成長に100年掛かるとすれば、100年間寿命のある住宅をつくれば、環境に負荷を与えない完全なサイクルが成り立つとする理論も存在しています。
(参考文献:「木材の住科学 木造建築を考える」東京大学教授 有馬孝禮著 東京大学出版会)

木造の住宅を作るのは時間が掛かります。
なぜかといえば、生き物を人間の生活容器とするからです。
何十年、何百年と地面から養分を吸い続けて成長した樹木を伐採すれば、その水分を抜いてやらなければなりません。
そして木材は、乾燥することにより強度を持つ性質をもち、乾燥時間が非常に大切で、建物にその命の形を変えてから何年生きてゆけるかが決められる作業といえます。
このことを、大工さんはよくご存知です。

私は、その乾燥に必要な時間は神様が樹木と人に与えた「運命」ではないかと解釈しています。
まさに、住まい、特に木造軸組工法の家は、じっくりと建築主さんと話し合う必要があり、数年という月日はあっというまに流れてしまいます。

人は、四季の移ろいを感じつつ、数年の周期で我が家の完成の感激を味わい、木材はその時間の経過のなかで、乾燥を終えその家の一員として落ち着き、強度を発揮する。
その現場を通じて知り合ったメンバーは、私を含めて仲良しとなり、竣工後のメンテナンスも、知り合い、あるいは友人のひとりとして、また訪れることができるようになっている。

ロマンチストを気取っているのではなく、これが本来あるべき住まい創りであり、現実も経験しつつあります。

ファーストフードに対する「スローフード」という言葉があるように、住まいの創り方もスローであるべきで、これには、木造がピッタンコなのです。
私はこんな考え方、生き方がこの上なく好きです。

posted by まちかどけんちくか at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | すぎはら設計の住まい
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/53286937

この記事へのトラックバック